
本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.11.1
金価格上昇の真因
金(ゴールド)価格の上昇要因として、最近、頻繁に言われることは、「金価格が上がっているのではなく、通貨としてのドルの価値が下落しているからだ」というものがあるが、この点には、より深い説明が必要な状況のようにも感じている。つまり、「なぜ、ドルをはじめとして、通貨の価値が下落しているのか?」ということだが、この理由としては、「マネーの大膨張」、すなわち、「個人や企業」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行」の「バランスシート大膨張」が挙げられるものと考えている。
別の言葉では、「それぞれの部門で、順次に、資産と負債が膨張した状況」のことでもあるが、この結果として発生した現象が、「金価格の相対的な価値上昇」だったことも理解できるのである。つまり、最初は、「金とマネーの比率が1:1の状況」だったものが、その後、「マネーの残高が10倍に増えた時には、当然のことながら、金の価格も10倍に増える状態」が発生することが見て取れるのである。
ただし、この時の注意点としては、「100年前の1ドル」と「現在の1ドル」との間に、「名目上ではなく、実質上の違いが存在する事実」であり、このことが、「貨幣の購買力」と呼ばれている状況ともいえるのである。別の言葉では、「1オンスの金で、どれほどの商品が買えるのか?」ということでもあるが、この点に関して、頻繁に使用される例は、「スーツの価格」であり、実際には、「100年前の約20ドル」と「現在の約2700ドル」が、「一着のスーツの値段」とも理解されているのである。
そして、今後の展開を考える上で最も重要なポイントは、「これから、お金の残高がどのような変化を見せるのか?」であり、この点を考える際に必要なことは、「お金はストックであり、ハイパーインフレで消滅する事実」だと考えている。つまり、「民間企業や個人」と「民間金融機関」、そして、「中央銀行」との関係性においては、「個人や民間企業の預金が民間金融機関の負債になる」という状況であり、この結果として、「バブル崩壊で発生した民間企業などの不良債権が、最初は、民間金融機関に移行し、現在では、より巨大な組織である中央銀行へと、再度、移行した状況」となっているのである。
そのために、今後の注目点は、「最後の貸し手である中央銀行バランスシートを、どのように大膨張させるのか?」でもあるが、現在では、「民間部門からの借り入れによる国債の買い入れ」という「リフレーション政策」が限界点に達したために、今後は、「無制限の紙幣増刷によるマネー残高の大膨張」と「金価格の暴騰」を想定している次第である。