本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.11.5

経済成長の実態

日本のマスコミでは、依然として、「経済は成長すべきものである」というような意見が頻繁に見受けられるが、この点については、「失われた30年」、すなわち、「日本経済が、ほとんどゼロ成長だった30年間」に関して、「なぜ、このような事態が発生したのか?」の分析や反省が行われなかった状況を表しているものと感じている。別の言葉では、「戦後の奇跡的な経済成長の亡霊」に捕らわれ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代が再来すると考えている人々が、いまだに、数多く存在する状況とも言えるようである。

しかし、現在では、「世界的な金融システムや通貨制度の崩壊」までもが危惧されるような状況となっているために、現時点で必要なことは、「産業革命後の過去200年間に、どのような商品が産み出され、また、その時に、どのようなマネーが創り出されたのか?」の理解だと考えている。具体的には、「200年ほど前の第一次産業品や羊毛などの軽工業品」に始まり、次に、「100年ほど前の自動車産業や化学産業」などの発展、そして、その後に、「1980年代の金融商品大膨張」へとつながった展開のことである。

そして、一方で、「お金(マネー)の変遷」としては、「1816年に始まったイギリスの金本位制」、そして、「1933年から1945年にかけての金本位制の変化」、すなわち、「金貨本位制」から「金地金本位制」、そして、「金為替本位制」へと変化し、最後の段階では、「1971年のニクソンショックにより、金本位制の廃止へとつながった状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「実体経済の成長に伴い、より多くの資金が必要とされ、結果として、通貨制度が改正された状況」とも言えるのである。

その結果として、現在では、「実体経済をはるかに上回る規模のマネーが、デジタル通貨として世界を駆け巡っている状態」となっており、また、「世界の国家債務も、これ以上の膨張が難しくなった状況」とも理解できるのである。別の言葉では、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」と似たような状態になっているために、これから必要なことは、「今後、どのようにして経済を成長させるのか?」ではなく、「今後、どのような社会が形作られるのか?」にあるようにも思われるのである。

より具体的には、「村山節(みさお)の文明法則史学」などを参考にしながら、「1600年前に、どのような社会が形成されたのか?」を考えることでもあるが、実際には、「西暦476年の西ローマ帝国滅亡」という事実が示すとおりに、「信用の消滅が進展する世界では、経済成長などは夢物語の状況」だったようにも感じている。