本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.1.20

現代版の悪貨と良貨

「悪貨は良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」、すなわち、「見栄えの良い通貨は手元に置き、見栄えの悪い通貨を市場に放出する結果として、市場では見栄えの悪い通貨が主に流通する状況」については、「現代版の悪貨と良貨」という観点から考え直すべきだと考えている。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度においては、「良貨」が「発行コストが高く、信頼度も高い紙幣」であり、また、「悪化」については、「発行コストが安く便利ではあるものの、信頼度が低いデジタル通貨」であるとも理解できるからである。

その結果として、現在では、「デジタル通貨という悪貨が、紙幣という良貨を駆逐した状況」となっており、実際のところ、「デジタル通貨の発行残高と流通量は、紙幣の発行残高と流通量をはるかに上回る状態」であることも見て取れるのである。ただし、この時の注意点としては、「民間金融機関のバランスシートが膨張している間は、デジタル通貨の残高が増えていた状態」だったものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)以降は、デジタル通貨の発行残高が頭打ちになるとともに、中央銀行のバランスシート残高が急増し、紙幣の発行残高が増え始めた状況」だったことも指摘できるのである。

別の言葉では、「2008年前後のGFC」を境にして、「悪貨のデジタル通貨」から「良貨の紙幣」へと、徐々に、移行が始まった状況であり、この理由としては、「逼迫し始めた国家財政」が挙げられるものと感じている。つまり、「国家の財政」に関しては、基本的に、「民間からの税収」で成り立っているものの、現在では、「民間からの税金を、ほぼ徴収しつくした状態」とも考えられるのである。

より詳しく申し上げると、「四種類の税金」のうち、現在は、「目に見える現在と将来の税金」の二種類に加え、「三番目の目に見えないインフレ税」が「リフレーションの形で国民が気付かないうちに徴収されていた状況」だったことも理解できるのである。そして、残っているのは、「四番目の目に見えないインフレ税が、国民の気付く形で課される状態」、すなわち、「紙幣の大増刷」とも考えられるのである。

そして、この点については、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「駆逐された良貨の復権」とも言える状況であり、実際には、今後、「信頼度の高い紙幣」が大量発行されることにより、「信用本位制と呼ぶべき通貨制度の崩壊」のみならず、「本来のマネーである金(ゴールド)や銀(シルバー)の復権」も想定されるのである。