
本間宗究(本間裕)のコラム
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2025.2.12
貴金属の取り付け騒ぎ
最近の「ロンドン貴金属市場における混乱」については、実際のところ、「貴金属の取り付け騒ぎ」とでも呼ぶべき状況とも思われるが、この理由としては、「多くの投資家が、より信用できる通貨への交換を望み始めた展開」が考えられるからである。つまり、過去の「銀行の取り付け騒ぎ」については、「預金の保有者が、預金を預けてある銀行への信頼感を失い、より信用できる紙幣への交換を望んだ状況」とも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、「1913年のFRB創設」以降、「世界のマネー」については、「氷のような状態の金(ゴールド)」から「水のような状態の紙幣」、そして、「水蒸気のような状態のデジタル通貨」へと急激な変遷を遂げたことも見て取れるのである。そして、この過程で、「マネーの大膨張」が発生するとともに、「通貨価値の下落」も顕著になったものの、多くの人々は、「今後もこの傾向が進展し、近い将来に、本格的なキャッシュレス社会が到来する」と信じ込んでいる状況とも言えるのである。
しかし、一方で、「中国やロシアなどのBRICS諸国」については、「西洋諸国の金融システム」、特に、「国家債務の累積的な増加」や「デリバティブのバブル」などに危機感を覚えながら、「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの蓄積」に励んでいた状況だったことも見て取れるのである。つまり、現在のような「西洋諸国の野放図な国家財政」については、持続可能性に問題があるという認識をしながら、「金融システム崩壊後の世界を睨み、貴金属の購入に励んでいた状況」とも理解できるのである。
このように、今まで世界の金融市場で進展していた現象は、「マネーの根源」とも言える「貴金属の奪い合い」であり、実際には、「政府や中央銀行の信用を基にした紙幣やデジタル通貨」よりも「カウンターパーティーリスクが存在しない貴金属」を保有し始めた動きとも言えるのである。つまり、より安全な資産へと資金移動を始めたわけだが、この時に発覚した問題点は、「フラクタルバンキングの欠点」、すなわち、「預金などの残高に関して、銀行が全ての残高を保有していない事態」とも言えるのである。
より具体的には、「部分的な残高保有により、現在の世界的な金融システムが成り立っている状況」のことでもあるが、この点に加えて、「1971年のニクソンショック以降、金と通貨の関係性が断たれた状況」を考慮すると、今回の「イングランド銀行への信用失墜」については、未曽有の規模での「世界的なデジタル通貨から貴金属への資金移動」の発生につながる展開も想定されるようである。