ストックマーケットレポート・サンプル 2016.10.30号

* サンプルとして、冒頭の約1ページ分を掲載しております。

1:ファンダメンタル

今回は、「10月14日」の「イエレン議長の演説」について、詳しく説明させていただきますが、驚いたことに、今回の演説は、今までとは全く違い、「素直に、現在の経済理論の未熟さを暴露した内容」となっています。つまり、「金融経済と実体経済との関係性」や「インフレの発生メカニズム」、あるいは、「金融政策が、どこまで有効なのか?」などを、純粋に問題視するとともに、「FRBのエコノミスト」だけではなく、「全ての経済学者」に、いろいろな「問題提起」をするとともに、「更なる研究」を要求しているわけです。

また、最初の言葉として、「極端な経済変動」を指摘していますが、この時に起こることは、「世の中がどのように機能するのかを、人々に考え直させるとともに、既存の経済理論の欠陥を暴き出す効果がある」とも述べています。そして、この典型例としまして、「1929年の大恐慌」と「1970年代のインフレ」を挙げていますが、「この時に発生した変化は、経済現象に関する新たな理論を構築する動きだった」とも説明しているわけです。

つまり、以前から申し上げています「偉大な経済理論は、大変化の時期に誕生する」という「過去の経験則」、あるいは、「先人の教訓」を、イエレン議長が熟知していることが、今回の演説で、はっきりと理解できたわけです。別の言葉では、「イエレン議長は、たいへん真摯な経済学者ではないか?」と、私自身の認識を新たにしましたが、問題は、やはり、「理論」と「実践」との「違い」とも言えるようです。具体的には、「理論的に実証されていない金融政策でも、FRB議長として実施する必要性があった」という点を、今まで、真剣に悩まれていたようにも感じられたわけです。

そして、もう一つの「大きな経済変動」としまして、今回の「金融危機」を挙げていますが、具体的には、「2007年、あるいは、2008年からの金融混乱」のことになります。つまり、現在の世界情勢は、「1929年の大恐慌」や「1970年代のインフレ」に匹敵、あるいは、それ以上の大変革期であると考えているようですが、この点につきまして、素直に、「過去数年間に起きた変化は、既存の経済理論では説明できないことであるとともに、経済学者が解決すべきいろいろな問題点を、我々に提示した」とも述べているわけです。

また、「現在の問題点は、決して新しいものではないが、早急に解決すべき事柄である」ともコメントし、今回の「ボストン地方連銀主催の第60回経済会議」に向けられた議題であるとも述べられているわけです。そして、これらの問題を追求し、解決することが、「FRB」や「その他の金融当局者」にとっても、きわめて重要な点であるともコメントしていますが、私自身としましては、この文章を読んだだけで、「イエレン議長の危機感」と、「現在が、どれほど危機的な状況にあるのか?」が、はっきりと理解できたようにも感じた次第です。