ストックマーケットレポート・サンプル 2017.9.20号

* サンプルとして、冒頭の約1ページ分を掲載しております。

1:ファンダメンタル

以前に申し上げましたとおりに、現在、「中国」が目論んでいることは、「上海協力機構(SCO)の強化」と「金本位制の復活」とも言われています。つまり、「アメリカ」に代わり、「次の覇権国家」になる野望を抱いているようですが、今回は、この点に関しまして、「9月1日の Nikkei Asian Review」に掲載された「Damon Evans氏」のコラム記事を紹介させていただきながら、現状把握に努めたいと思います。具体的には、「中国が目論む新たな世界秩序~金に裏付けされた新たな原油のベンチマーク(基準)~」という題名になります。

「中国」は、間もなく、「金に交換可能な人民元建ての原油先物」を開始すると言われているが、このことは、石油業界にとって、大きな影響を与えることになる。この先物は、現在、「中国が、世界の原油市場で最大の輸入国である事実」を考慮すると、「アジアの原油市場」において、最も重要なベンチマークになるものと思われる。現在、原油市場は、「ブレント」や「WTI」などの「ドル建ての指標」に関連して価格が決定されている。「中国」の動きは、「ロシア」や「イラン」などの国々に対して、「人民元建ての取引」を行うことにより、「米国の経済制裁」を回避する効果が存在する。そして、この取引を促進するために、中国は、「人民元が上海や香港の取引所で、金と完全に交換できる」と発表するものと推測される。(出典:Nikkei Asian Review)

上記のコメントにつきましては、いろいろな解説が必要だと思われますが、最初に重要な点は、「兌換紙幣」と「不換紙幣」の違いを理解することでもあるようです。つまり、「兌換紙幣」というのは、「一定の金や銀との交換が約束された紙幣」のことであり、また、「不換紙幣」というのは、現在の「一万円札」のように「金や銀との交換が約束されていない紙幣」のことになります。そして、今回の「金に交換可能な人民元」というのは、実質上、「兌換券の発行」、あるいは、「金本位制の復活」を意味することも理解できるわけです。

また、「なぜ、今回、中国がこのような行動を取るのか?」につきましては、実際のところ、「二つの目的」が存在するものと考えています。つまり、最初の理由としまして、現在の「不健全な通貨制度」からの脱却であり、この点につきましては、今までに、詳しく申し上げたとおりになります。そして、二つ目の理由が「覇権国家の移行」になりますが、基本的には、「いろいろな商品が、どの通貨で、主に取引されるのか?」が、「世界の覇権国家」を判断するうえで重要な点でもあるわけです。

具体的には、「1950年前後」に、前回の移行が発生しましたが、この時には、それまでの「ポンド建て」から「ドル建て」へ徐々に変化していった状況でもありました。つまり、19世紀は、「大英帝国」が、絶対的な経済力と軍事力を背景にして、いわゆる「パクス・ブリタニカ」と呼ばれる時代を形成したわけですが、その後、二つの世界大戦を経て、「パクス・アメリカーナ」と呼ばれる「アメリカを中心とした世界経済」へ移行したわけです。そして、現在では、「中国」が、この位置を狙い始めている状況とも言えるようですが、私自身としましては、「いろいろな要因により、中国の思い通りにはならない可能性」を想定しています。