ストックマーケットレポート・サンプル 2017.12.10号
* サンプルとして、冒頭の約1ページ分を掲載しております。
1:ファンダメンタル
今回は、「11月13日」に「スイスのチューリッヒ大学」で行われました「黒田日銀総裁の講演内容」を説明させていただきますが、この理由としましては、「11月19日の日経新聞」で「黒田総裁の金融緩和を巡る発言に変化が生じている」と報道されているからです。つまり、現在では、「アメリカの金融政策」が、完全に「出口戦略」を意識したものとなっており、また、「ECB(欧州中央銀行)」も、いわゆる「テーパリング」と呼ばれる「国債買い付け金額の減少」を発表しているわけです。
そのために、今後の注目点は、「金融緩和に最も積極的な日銀」に集まり始めているようですが、このような状況下で、今回、「黒田日銀総裁」は「金融緩和の副作用」に言及し始めるとともに、「リバーサル・レート」という経済理論も紹介し始めているわけです。つまり、「市場の関心」は、「日銀が、今後、どのような金融政策をとるのか?」、あるいは、今まで「日米欧の中央銀行」が協調して実施した「空前絶後の金融緩和」が、「今後、どのような変化をし、また、どのような影響を市場に与えるのか?」に移行し始めているようにも感じられるわけです。
このように、現在は、「世界中の人々が、金融政策や市場の変化を認識し始めた段階」とも言えるようですので、今回は、「黒田日銀総裁の講演内容」の重要な部分を抜粋し、私自身の説明を加えさせていただきます。具体的には、上記の「消費者物価と政策金利のグラフ」から説明が始まっていますが、この点につきましては、次のように説明されており、この時に感じることは、「海外の金融専門家へのコメントのためか、普段よりも丁寧な説明となっている状況」でもありました。
それでは、15 年間にわたって続いた日本のデフレから話を始めます。日本では、1980 年代末から 90 年代初めにかけて、大規模な資産バブルが発生しました。この資産バブルが破裂する過程で、経済の大幅な減速とインフレ率の低下が続き、1990 年代末には、消費者物価の前年比がマイナスの領域に落ち込みました。その後、15 年間にわたり、例外的な一時期を除いて、物価はマイナス圏から抜け出すことができませんでした。 デフレが長期間にわたって継続する要因について、経済理論は2つの可能性を指摘しています。第一の仮説は「自然利子率の低下」であり、第二の仮説は「インフレ予想の低下」です。「自然利子率」とは、「ある国の経済にとって、景気を加速も減速もさせない中立的な実質金利の水準」のことです。学術的にも様々な議論がありますが、その水準は、潜在成長率によって概ね規定されると考えられています。「名目政策金利」には「ゼロ%」という下限がありますので、潜在成長率やインフレ予想が低下すると、自然利子率に比べて実質金利が高止まりしてしまい、十分緩和的な金融環境を実現できなくなります。その結果、デフレからの脱却が困難になるというわけです。(出典:黒田日銀総裁)