ストックマーケットレポート・サンプル 2018.7.20号

* サンプルとして、冒頭の約1ページ分を掲載しております。

1:ファンダメンタル

前回のレポートで触れましたように、最近、「マクロ・プルーデンス」という言葉が、より頻繁に使われるようになりましたが、その理由としては、「2008年前後のGreat Financial Crisis(GFC)」以降、「金融システムの健全性」に対する関心が高まった点が指摘できるようです。そして、「日銀」は、次のとおりに、「ミクロ・プルーデンス」が「個々の金融機関の健全性を確保すること」であり、また、「マクロ・プルーデンス」が「金融システム全体の安定を確保すること」と説明していますが、一方で、今回の「BISの年次総会」では、「金融システムの安定(マクロ・プルーデンス)を、正確に定義することは難しい」とも説明されています。

「マクロ・プルーデンス」とは、金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図ることを通じて、金融システム全体の安定を確保するとの考え方で、考査やオフサイト・モニタリングといった活動に代表される「ミクロ・プルーデンス(個々の金融機関の健全性を確保すること)」に対置される概念です。「マクロ・プルーデンス」では、特に、金融システムを構成する金融機関や金融資本市場等とそれらの相互連関、実体経済と金融システムの連関がもたらす影響が重視されます。わが国では、バブルの生成・崩壊を含む様々な金融危機を経て、マクロ・プルーデンスを重視する動きが強まってきています。また、2008年(平成20年)のリーマン・ブラザーズ証券の破綻をきっかけとする国際金融危機以降は、国際的にもマクロ・プルーデンスの重視が大きな潮流となっています。こうした動きの背景には、次のような認識のもと、「個々の金融機関の健全性を確保するだけでは、金融システム全体としての安定を必ずしも実現できるわけではない」との見方が強まっていることがあります。(出典:日銀)

そのために、今回は、「なぜ、GFC(大金融危機)以降、金融システムの安定が注目を浴びるようになったのか?」、あるいは、「ミクロ・プルーデンスとマクロ・プルーデンスの違いは、いったい、どのようなものなのか?」を、詳しく説明させていただきます。そして、この分析により、現在、市場の関心事となっている「金融緩和の副作用」が、はっきり姿を現すものと考えていますが、基本的な手法としましては、やはり、「歴史を遡りながら、出来事を具体的に分析する方法」が、最も近道のようにも感じています。

別の言葉では、現在の問題として、いまだに、「GFC(大金融危機)の実態」が理解されておらず、また、この理由として、「金融システム」や「マネー大膨張のメカニズム」が正確に認識されていない点が挙げられるようにも感じられるわけです。つまり、「アベノミクス」や「異次元の金融緩和」などの言葉が盲目的に信用され、その結果として、「現在、何が、最も重要な問題点なのか?」が理解されていないようにも思われるわけです。

より詳しく申し上げますと、次のグラフのとおりに、「マクロ・プルーデンス」という言葉が、「中央銀行の会議で、頻繁に使われている状況」、あるいは、「マクロ・プルーデンス的な政策が増えている状況」が説明されていながらも、前述のとおりに、「金融システムの安定とは、いったい、どのようなものなのか?」が、明確に理解されていないわけです。そのために、「訳の分からない説明」が繰り返されるものの、反対に、「今後、どのような展開になるのか?」が、より一層、不明瞭となっている状況のようにも感じられるわけです。