ストックマーケットレポート・サンプル 2019.11.20号

* サンプルとして、冒頭の約1ページ分を掲載しております。

1:ファンダメンタル

最近では、「劣化した日本人」や「日本の地盤沈下」という言葉が頻繁に聞かれる状況となっているようですが、この点については、「ユニクロの柳井会長が、10月9日付けの雑誌インタビューで述べられたコメント」が参考になるものと考えています。具体的には、「今までの30年間、世界は急速に成長してきたが、日本はほとんど成長できず、先進国から中進国になっていって、もしかしたら開発途上国に転落してしまうかもしれない」、そして、「本屋で“日本が最高”という本を見かける度に、いつも気分が悪くなる」というように、「日本の将来」を憂慮されているわけです。

また、この時に、「二つの改革案」を提示されていますが、「一つ目」は「財政支出を半分に減らし、公務員の数も半分に減らすこと」、そして、「二つ目」が「参議院と衆議院がきちんと機能していないために、議会を単院制に代えること」になります。つまり、「日本を代表する経営者」としては、「劣化した日本人」を憂い「当然の意見」を述べただけの状況とも言えるようですが、一方で、私自身は、「柳井会長」の想定を超えた、「従来の価値観」では判断できないほどの「時代の大転換」に見舞われている可能性があるものと考えている次第です。

そして、この時に必要なことは、「バブルの非対称性」を理解することだと考えていますが、実際には、「バブルの発生と崩壊」に関する「メカニズムの違い」を理解することになります。つまり、「バブルの発生と成長」につきましては、「バブルの崩壊時まで、バブルの存在にも気づかないような状況」となるものの、一方で、「バブルの崩壊」の時には、「ほとんどの人々が、短期間の内に、どのようなバブルが発生していたのかに気付く」という「意識の大転換」が発生する状況のことです。

また、この理由としては、「時間」と「参加者の人数」との関係性が指摘できますが、実際には、「1980年代に発生した日本の土地と株式のバブル」のように、「最初の段階」である「1980年代の初頭」は、「徐々に、投資への参加者が増えていった」という状況でもありました。そして、「最後の段階」である「1989年」には、「ほとんどの人がバブルの意識に凝り固まった状態」、すなわち、「日本の国土は狭いから、土地の価格は上がるのが当然である」、あるいは、「日本株は、今後も継続して上昇するはずだ」というような認識を、数多くの日本人が持ったわけです。

しかし、実際には、次のグラフのとおりに、「1990年にバブルが崩壊し、人々の意識が大きく転換した」、すなわち、「バブルに対して、一斉に、人々の認識変化が発生した」という状況でもあったわけです。つまり、「人々の覚醒や気付き」が発生したわけですが、実際には、「日本人が、自分の過ちに気付いた」という状況であり、このことが、冒頭の「劣化に対する気付き」のようにも感じられるわけです。別の言葉では、「日本人の劣化」という言葉は、一方で、すでに、「日本人の覚醒」が始まったことを意味しているようにも感じられるわけです。